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   放射線科

.16列マルチスライスCTにおけるスライス厚

 16列マルチスライスCTについて、ビーズ法により、スライス厚を測定しました。ビーズ法によるスライス厚計算は、繰り返し処理が多く、煩雑で時間を要するので、容易に計算できるよう専用ソフトを作成しました。(そのソフトについて
 ビーズファントムは、自作したものを用いました。ビーズファントムとして用いたのは、0.5mmボールペンチップのボール(以下ビーズと呼ぶ)を使用しました。未確認ですが、材質は金属またはセラミックと思われ、十分なX線コントラストが得られます。

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特別な材料を使わずに、ありあわせのもので、ビーズファントムを作製しました。
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用意したものは、

@8cm×8cmの正方形にくりぬいた画用紙
(くりぬいた部分は、二つ折りにしたときちょうど重なり窓のようになる)

Aギプス用綿包帯から白色の綿包帯のみ剥がしたもの

B0.5mmΦビーズ

です。

黄色矢印の先に0.5mmΦビーズがありますが、小さすぎて、この写真では見えません。

ボールペンチップのボールは、ニッパーでペン先の少し根元側からペン先に向かって少しずつしごいていくと取り出せます。

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白色の綿包帯を二つ折りにし、その中にビーズを挿みました。

これを、さらに画用紙に挿み、糊で固定しました。

そのとき、8cm×8cmの正方形にくりぬいた窓の中央にビーズがくるようにしました。

ビーズファントムは、CTのテーブルの端に取り付け、空中でスキャンするようにしました。
 

 

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使用したCTのスライスコリメーションは、16×0.6mmと16×1.2mmの2種ですが、ビーズのサイズは0.5mmあるので、スライスコリメーションは、16×1.2mmのみとしました。

ガントリー内のビーズ位置は、回転中心より50mm変移させました。

ビーズを中心に、FOV50mm、スライス間隔0.3mmで再構成しました。
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左の画像は、ビーズファントムのトポグラムで、ビーズ像がハイコントラストで描出されました。

スキャン範囲の位置決めに、迷うことはありません。

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左上のグラフは、設定スライス厚を1.5mm一定とし、ビームピッチ(以下BP)を変化させたときのSSPzです。

このSSPzは、ビーズの背景(空気)の平均CT値を減算した値としました。

4本のSSPzの形状は、ピークから裾まで、ほぼ一致しました。ただし、BP1.5では、カーブ形状に歪みが生じました。

各SSPzのFWHMの値を下の表に示しました。ほぼ一致しました。
BP FWHM(mm)
0.75 1.94
1.00 1.86
1.25 1.97
1.50 2.07

左下のグラフは、SSPzから求めたMTFです。こちらも、ほぼ一致しました。

高周波閾で差がみられますが、SSPzのピークの高さに応じたものと思われます。

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左のグラフは、BP0.75一定とし、設定スライス厚を、1.5mm、2.0mm、3.0mmと変えたときのSSPzです。


設定スライス厚が厚いほど、ピーク値が低下し、裾の広がりが大きくなりました。

各設定スライス厚のFWHMの値を下の表に示しました。設定スライス厚が薄いほど、FWHMとの差が大きくなりました。

スライス厚
(mm)

FWHM
(mm)
1.5 1.94
2.0 2.31
3.0 3.28

MTFは、設定スライス厚が厚いほど、低下しました。

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SSPzのピーク位置での画像を比較しました。設定スライス厚は1.5mmで、HPは0.75、1.0、1.25、1.5の4種です。表示ウィンドウ条件は統一しました(ウィンドウレベル-901、ウィンドウ幅413)。

BPが大きいほど、ストリーク状アーチファクトの本数が増えました。

ビーズ(ボールペンのボール)のX線吸収が高く、ビーズと背景の空気との間で高いコントラスト(X線吸収差)が生じ、アーチファクトがとらえやすくなったものと思われます。

ビーズ像、背景およびアーチファクトのCT値は以下のとおりでした。
位置 CT値(HU)
ビーズ像中央 約 2200
背景(空気) 約 -1000
ストリーク状アーチファクト
の最大値
約 -950
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16列マルチスライスCTについて、実用的なBP0.75〜1.5の範囲でのビーズ法によるスライス厚測定を行ったところ、スライス厚のBP依存性はみられませんでした。ただし、BP1.5ではSSPzの形状に歪みが出てくるので、当院のルーチン検査では、BP1.25を上限として使用しています。

BPが大きいほど、ビーズ像のアーチファクトは、増す傾向がみられました。

ビーズ像とアーチファクトのCT値差は大きく、アーチファクトが問題視されるケースは少ないと思われます。ただし、背景と大きなコントラス持つ骨、石灰化、金属の人工物などでは、サイズ、形状、数、分布によりアーチファクトが重畳されてしまう場合には、BPを下げなければならないでしょう。

ビーズ法によるスライス厚測定が、自作した専用ソフトを用いることにより、容易に行えるようになりました。
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