MRI装置

デザインと性能の目安
 デザインはいろいろですが、いわゆるトンネル型と呼ばれるものが一般的で、当院の装置は2.3m×1.6m×2.3mの箱型で中央に直径60cmのトンネルの開口部があり、この中に被検者(患者様)が入るようになっています。下の写真は当院のMRI装置で、ドイツシーメンス社製Avantです。
 MRI装置性能の目安となる静磁場強度(磁石の力)は1.5T(テスラ)で、高磁場装置と呼ばれています。1.5Tという強力で安定な磁場を発生させるために超伝導コイル(電磁石)を使用しています。静磁場強度の数値が大きいほど、質の高い画像を描出することが出来ます。また、検査時間の短縮も期待できます。大崎医療圏には、0.2T〜1.5Tの装置がありますが、1.5T装置は数台しかありません。
[ 1.0T(テスラ)=10000G(ガウス) ]

重量
 1.5T装置で、約5.5トンです。
 MRI装置は医療機器としては重量がありますが、構造上の制約で、床に固定することはできません。大きな地震で設置位置がずれ、使用できなくなる場合があります。
東北地方太平洋沖地震で、MRI本体の設置位置がずれ、使用できなくなった施設もありました。


 検査の時、比較的大きな機械音がします。「ドン、ドン...」とか「ダッ、ダッ、ダッ...」とかいった調子で、時々音の大きさや調子が切り替わります。騒々しい音ですが、単調な繰り返しなので、慣れると、小さな子供さんでも寝てしまうこともあります。ヘッドホンまたは耳栓などしますので、心配ありません。


      

 右の写真は当院のMRI装置の外観です。検査の時は、手前に突き出したベッドに寝て、そのまま中央のトンネル状の穴の中へ、ベッドごと自動的に移動するようになっています。

MRI検査

○ 検査時間
 30分ぐらいの場合が多いです。特殊な撮影や造影撮影の追加があると30分を超えるときがあります。

○ 検査目的
 身体各部の断面を撮影し、任意の断面で主として神経系や体の深い部位にある病変の大きさや形を詳しく調べる検査です。脳動脈瘤を始め、自覚症状のない(無症候性)脳梗塞や脳出血さえ検出可能なので、脳ドックにあっても欠かせない検査になっています。

○ 検査法
 一般的には被検者(患者さん)は仰向けに寝たままで検査します。コンピュータ上で撮像条件を変えることで、全身のあらゆる方向の断面を画像化します。患者さんには、ストレス無く検査を受けていただけるよう、トンネルの外を鏡で見えるようにしたり、クッションなどを使用して楽な姿勢を保持できるよう工夫しております。検査の途中で我慢ができなくなった時は、マイクや手元のスイッチで連絡が取れるようになっています。

○ 検査結果
 当院では、検査結果としての画像を写真に撮ることなく、PACSと呼ばれるコンピュータサーバーに記録保存しています。PACSの画像は、院内のLANを通じて、MRI室以外の部屋からもいつでも参照することができるようになっています。基本的にデジカメと同じデジタル画像なので、CD-RやUSBメモリに保存したり、インターネットを通じ、世界中どこへでも送信することが可能です。

 

撮像原理と画像のコントラスト

 0.2T〜3.0T(1T=10000G)という強力な静磁場において、高周波の電磁波照射および磁場分布の切り替えを高速かつ高精度で制御し、核磁気共鳴という現象を発生させることで、人体の水素原子の分布を画像化します。 
 X線CTは、X線吸収差を反映した1種類のコントラストしか画像化できず、血管の画像化には造影剤を使用しなければなりません。MRIでは、高周波の電磁波照射および磁場分布の切り替えのタイミングを変化させることで、様々なコントラストの画像が得られ、また造影剤を使用せずとも血管の走行を画像化できます。MRI検査では、X線被ばくが無いことも大きな特徴です。
 当院では全身の検査を行っていますが、例として、頭部(脳)について、当院の標準的なMRI検査で得られる画像を示します(下の@〜F)。6種類のコントラストの画像と血管画像を撮影し、診断に必要な情報を得ています。

@ T1WI 

脳実質内・外の形態

D DWI 脳循環障害および虚血による脳組織障害

A T2WI 脳実質内・外の病変の検出

E SWI 出血や石灰化の検出、静脈の走行
B FLAIR 脳実質内の病変検出 F MRA 動脈瘤の検出、動脈の走行 

C T2*WI 出血や石灰化の検出

注意すること

 1.5TのMRI装置は、エレキバンの数百倍〜数千倍の磁力が常時発生しています。磁性体(特に鉄製)の物品は空中を飛んで装置に吸着されてしまうほどです。検査室に入る前は、金属を身につけていないか、インプラントの有無と種類を繰り返し確認しています。まれに閉所恐怖症で検査できない方もいますが、安全、安心な検査を受けて頂けるよう、十分な説明を心がけています。

@体内に心臓ペースメーカーを埋め込んでいる方、妊娠されている方は、原則禁忌です。
A手術等で体内に金属が入っており、その金属の材質によっては撮影が出来ないことがあります。
B検査室では時計・磁気カード,電子機器等は壊れてしまうことがありますので持ち込めません。
Cカラーコンタクト、エレキバン、入れ歯は外すようになります。
D磁性体が含まれている化粧品(マスカラ・アイライン・アイブロウ・アイシャドウ等)は落とす必要があります。

*その他、ご不明な点は担当医師・技師におたずねください。

東北地方太平洋沖地震を経験して

 地震発生時は検査中でしたが、装置より速やかに患者様に退避していただき、その直後に停電となり、事なきを得ました。
 停電の復旧後直ちにMRIシステムを立ち上げ各部の点検を実施しましたが、全く異常無く使用できました。メーカー側による細部の点検でも異常はみつかりませんでした。
 宮城県内では、停電が復旧しても、故障、破損、設置位置のズレ、建屋の被害発生により稼動できない病院が少なくありませんでした。建屋を含め、全く被害は発生せず、当院のMRI検査室の総合的な安全性を確認することになりました。

 

地域医療連携

 当院では、地域医療連携を進め、MRI装置を有しない病院、クリニックよりMRI検査紹介を頂いております。
 「大崎医療圏では数台しかない1.5Tの高磁場MRI装置」、 「東北地方太平洋沖地震でも全く被害が発生しなかったMRI検査室」の組み合わせは、検査を受ける患者様に、より良い精度、安全および安心を提供できるものと考えます。